第39章 欲しいもの
「……どうした。」
コハクの様子が気になって、ローも足を止める。
「ロー…。オレ、ちょっとあっち、見に行きたい。」
そう言ってコハクが見つめるのは、先ほどから騒ぎが起きてる方向だ。
「わざわざ諍いに飛び込むようなマネをするな。…モモが心配するだろ。」
彼女と約束したのだ。
コハクを頼む…と。
モモの名前を出せば、さすがのコハクも言うことをきくかと思ったが、それでも彼はその場を動かない。
まったく、だから子供は嫌いなんだ。
「オイ、いい加減に…」
「母さんのような気がするんだ。」
ローの言葉を遮るように、コハクはこちらを向いて答えた。
「なんだと…?」
モモがなんだって?
「騒ぎの中心には、母さんがいるような気がするんだ。」
「……。」
そんなわけない。
そう言おうとするけど、あまりの必死な形相に、簡単に決めつけていいものか悩む。
そんなローの代わりにシャチたちが口を開いた。
「そんなわけねぇよ。コハクは心配性だな。モモなら今頃、船で留守番中だろ。」
「そうそう。それにジャンバールもついてるから、心配いらないッス。」
ジャンバールはハートの海賊団の中では新入りになるが、もともと船長をやっていただけあって、腕は立つ。
「大丈夫だよコハク。そんなに心配なら、早くコーティング職人を見つけて船に戻ろう。」
誰も騒ぎの中にモモが巻き込まれてるなどと考えもしない。
(違う、違うんだ…。)
コハクがなぜ、あの中にモモがいると思うかといえば、単純に虫の知らせだろう。
胸のざわめきが、さっきから治まらない。
そんなの、ただの勘違いだと言われてしまえば それまでのこと。
でもコハクは、あの無人島でヒスイと2人、モモを守る生活を送る中、この直感がどれだけ大事かを知っていた。
どうしたら、この想いを伝えられる…?