第39章 欲しいもの
一方、その頃のローたちは街の中心街で買い出しをしていた。
まず始めにコーティング職人を探し、仕事を依頼するつもりだったのに、予定はだいぶ狂わされている。
街に驚き興奮したコハクに、ベポ、シャチ、ペンギンの3人が兄貴風を吹かせ、あれやこれやと構いたがるせいだ。
彼らはコハクが珍しがるものをなんでも買ってしまうため、自然と荷物が増え、ボンチャリを数台レンタルする羽目になった。
オマケにコハクが途中で薬屋に寄りたがり、余計に時間をくってしまう。
「チッ…、寄り道ばっかりしやがって。薬屋なんか後でもいいだろうが。」
まったく進まない予定に苛つき、チクリと不満を漏らすと、コハクは「これだからローは…」と呆れたため息を吐いた。
「わかってねーな。薬屋は最重要事項なんだぞ。」
「…あ?」
なにが最重要事項だ。
1番大事なのはコーティング職人に依頼することだろう。
そう言ってやろうとしたけど、このあとコハクが言った言葉に押し黙るしかない。
「珍しい薬草を買って帰ると、母さんが喜ぶ。」
「……。」
それを聞いて、今度は先ほどとは違う不満が漏れそうになる。
なぜそれを、もっと早く言わねェ…。
知っていたなら、店の商品丸々買い上げてやったのに。
それで彼女の喜ぶ笑顔が見られるなら、これほど安い買い物はない。
今からでも戻ろうか…。
そんなバカなことを考えた矢先だった。
街が妙にざわめき始めたのは…。
「…? なんか変に騒がしいッスね。」
「本当だ、なんだろ? ケンカでもあったのかな?」
このシャボンディ諸島には、新世界の入口ともいえるだけあって、数多くの海賊が集まる。
諍いなどいつものことだ。
「放っとけ、行くぞ。」
そんなのに構ってられないとローは先を急ごうとする。
「へーい。」
「ちぇ、見物したかったなぁ。…コハク? どうした、行こうぜ。」
みんなが先に進む中、コハクだけが足を止める。
なんだか、嫌な予感がするのだ。