第39章 欲しいもの
しばらくして目的の油屋に到着し、整備用の油を樽でいくつも買った。
満タンに入った油樽はひとつでモモの身体半分ほどの大きさがあり、どう頑張ったって少しも持ち上げることができない。
結局、全ての樽をジャンバールが背負うことになった。
もちろんジャンバールにはそんなこと、最初からわかっていたから、少しも気にしなかったけど。
本気の本気で少しの役に立っていないモモは、はたして一緒についてきて良かったのか…とうなだれる。
ジャンバールは襲ってくる賞金稼ぎたちからモモを守らねばならないし、手間を余計に増やしてしまった気がする。
「気にするな、お前がいてくれたおかげで俺も楽しく街に来ることができた。」
そんなふうに気を遣ってくれるけど、どちらかと言えば、モモの方が見たことのない街に興奮して楽しんでいただろう。
落ち込んだ笑いを返すモモを励まそうと、ジャンバールは海を指さす。
「モモ、ほら、見ろ。あそこにコーティングされた船が停泊しているぞ。」
「えッ、どれ!?」
落ち込んでいた気分もなんのその。
ジャンバールの指差す方向に勢いよく首を振った。
「あ、あそこだ。」
そのあんまりにも扱い易い様子に、苦笑いしてしまう。
息子のコハクはあんなにも気難しくて扱いにくいのに。
きっと彼の父親は、モモの単純さを上回るくらい気難しい男に違いない。
「ジャンバール、少し見に行ってもいい?」
コーティング船を間近で見たいと、街へ来て初めての要望を言ったモモにジャンバールは安心する。
「もちろんだ。俺たちの船も同じようにコーティングされるんだから、参考にするといい。」
許可をもらうとモモは嬉しそうに笑い、少しはしゃぎながら船へと駆けていった。