第38章 シャボン玉の島
「ローが女嫌いって…、嘘でしょう。」
昔はもちろん、今だって彼からそんな気配は感じない。
むしろ、あの手の早さを考えると、女好きの部類に入るのではないだろうか。
「いいや、船長は紛れもなく女嫌いだ。…いや、嫌いというか、興味がないというのか。」
女を嫌いになるほどの興味すら持っていない。
ただ、彼の魅力に惹かれて、時折擦り寄ってくる尻軽女たちには わかりやすいほどの嫌悪を剥き出しにしているが。
「女のお前に言うのもなんだが…。俺はこの船に乗ってから、船長が女と一緒にいたり、夜の街に消えたりすることろを見たことがないな。」
たまに“そういう施設”を備えた酒場に行くこともあるが、店主がいくら「女を呼びましょうか?」と勧めても、ローが頷くことはない。
いつも「あとは勝手に楽しめ」と言って、ベポを連れて先に船に帰ってしまう。
正直、ローは“そっち”系の病気なのではないかと思った。
シャチやペンギンが言うには、ずっと昔はそんなことはなかったというが、ジャンバールが知るローという人物は常に女に興味がなかった。
だから、ローがモモに対して持つ執着心や態度にひどく驚いたのだ。
モモにだけは、あんな小芝居まで打って仲間に引き入れ、さらには大事な自分の作業部屋まで空けて部屋を用意した。
いくら彼女が有能な薬剤師だからといって、そんな行動は今までのローからは考えられない。
なにが原因でケンカをしたのかは知らないが、この1週間だって、ローはいつもモモを気にしていたし、ひどく落ち着かない様子だった。
まるで恋人の様子を気にするような仕草に、つい自分たちが間に入って仲直りをさせてやろうと意気込むほど。
「間違いないさ。船長はお前に執着してる。」
「……。」
ジャンバールの意見を聞いて、モモは無表情のまま、しばらく固まってしまった。
頭がごちゃごちゃと混乱する中、必死に考えをまとめていく。
もしかして、わたし。
なにか勘違いをしていた…?