第38章 シャボン玉の島
自分からそんな雰囲気が出てたなんて知らなかった。
でも、それよりもジャンバールの観察力に驚いた。
(気をつけなくちゃ…。)
さすがに、かつてモモがローたちの仲間だったなんて思われることはないだろうが…。
「そんなわけないじゃない。でも、ローのことは新聞で知っていたわ。もうすっかり有名人だもの。」
そう頻繁ではないが、シルフガーデンにも時折新聞が届いた。
1番の新しい新聞は、ローとルフィがドフラミンゴを倒したという記事。
長年七武海に加入していたドフラミンゴの敗北は、世間を大きく騒がせた。
だから、一般人である自分がローのことを知っていても、そんなにおかしくないはずだ。
モモの言葉に、ジャンバールは不思議がりつつも一応は納得したようで「そうか」と頷く。
「船長はやけにお前に執着しているように見えたから、なにか俺の知らない因縁でもあるのかと思ってな。すまん、勘違いだったようだ。」
「え、別に執着はしてないでしょう。」
ジャンバールにはそんなふうに見えていたのか。
確かに強引な勧誘のされ方だったけど、だからといって別になにも特別ではない。
むしろ特別じゃないから、その事実に傷ついていたばかりだ。
その言葉を聞いて、今度はジャンバールが驚く番。
「なにを言ってる。船長はあんなにお前を気に入ってるじゃないか。」
モモを仲間に引き入れて、あんなに嬉しそうなローを見たことがない。
「嬉しそう…? そんなふうに見えなかったけど。」
それどころか、いつもしかめっ面だったり不機嫌そうだったり。
それが全て、浮き足立つ気持ちを誤魔化すためのローの照れ隠しだと気づいていないモモは、心当たりがなくて首を傾げる。
「うーん…。ただ、そこそこ使える薬剤師を手に入れられたからじゃないの?」
昔のローも、モモの腕を認めて仲間にしようと躍起になっていたから、きっとその感覚なのだろう。
「いや…、それはないだろう。そもそも、女嫌いな船長がお前を仲間にしたことにも驚いたんだ。」
「え……?」
今、なんて…?
ローが、女嫌い?
聞き違いでなければ、ジャンバールはそう言わなかったか。