第38章 シャボン玉の島
見物に来ていたと思われるローは、天竜人の取り巻きや海軍をなぎ倒し、ジャンバールの首輪を外してくれた。
永遠に外れないと思われていた首輪を、いとも簡単に。
「実際に天竜人をぶん殴ったのは、麦わらのルフィだが、俺は地獄から連れ出してくれた船長に、なによりの恩義を感じている。」
「麦わらの…ルフィ…。」
今、ハートの海賊団と同盟を結んでいる“麦わらの一味”の船長だ。
そして…。
『なんかお前、俺の弟に似てんだよな…。』
そばかすの散った彼の笑顔が、頭の中に蘇る。
「会ってみたいな、麦わらのルフィに。」
自分に似てると称された彼の弟のことを、モモは新聞の中でしか知らない。
「麦わらの一味とウチは、同盟中だ。いずれ会うこともあるだろう。」
「ジャンバールは会ったことがある?」
「ああ。船長と合流するときにな。とはいえ、その後すぐにベポが病に倒れたから、会話という会話はしていないが…。」
唯一の治療薬があるシルフガーデンに引き返すため、彼らとは一度そこで別れた。
「それでも一緒に行くと最後まできかなかった。船長が無理やり突き放すように別れたが、気の良いヤツらだ。」
「そうなの…。」
話しぶりから彼らの人となりが伝わり、ますます会うのが楽しみになる。
「船長は、人を見る目がある。ヤツらを同盟相手に選んだのは、間違いなかったな。」
思えば、2年前のこの島から、ローとルフィの運命は交わりはじめていたのだろう。
そういえば…と、ジャンバールは以前から気になっていたことをモモに尋ねた。
「モモは船長を以前から知っていたのか?」
「ぅえッ!?」
唐突な、そして度肝を抜かれる質問に、声がひっくり返った。
「ど、どうして…?」
「いや、深い意味は無いが…。モモは船長のことをよく知っているように思えたからな。」
機嫌の直し方や、食の好み。
それに時折醸し出す雰囲気が、まるで旧知の付き合いのように感じられる時が多々ある。
ローの方からはそういったものは感じられないのに、モモはまるで昔から彼を知っていたかのようだ。
いや、ローだけじゃない。
ベポもシャチもペンギンも、ジャンバール以外の仲間全てにおいてだ。
自分にだけはそういった雰囲気を出さないから、なおさら違和感が募る。