第38章 シャボン玉の島
「いってらっしゃーい!」
街へと出かけていくローとコハク、ベポ、シャチ、ペンギンに向かって手を振った。
ちなみにヒスイはモモと一緒に船番として残った。
みんなが出かけてしまうと、船にはモモとヒスイとジャンバールの3人だけになる。
(さて、どうしようかな…。)
ハートの海賊団に仲間入りして、まだ1週間と少し。
薬の調剤はもちろん、薬剤師としての仕事や居場所はあるけど、まだ船にも慣れないモモはそれ以外の仕事を任されていなかった。
今日の分の調剤はとっくに済ませているし、なんの仕事もないモモは、急に手持ちぶさたになってしまう。
チラリとジャンバールを窺うと、彼はいそいそと船の倉庫の荷物をデッキに運び出していた。
「ジャンバール、なにをしてるの?」
「倉庫の整理と掃除だ。大掃除なんて、アイツらがいないこんな時にしかできないからな。」
「……え!」
倉庫の整理に掃除?
かなり失礼だけど、大きくて人相が悪いジャンバールが、そんなことを気にするとは思わなかった。
「倉庫はすぐに埃が溜まるし、ネズミが出るからな…。掃除は新入りの仕事なんだ。」
「え、そうなの?」
6年前、当時は1番下っ端だったベポは、そんなことをしていた様子はなかったが…。
また適当なことを言って、先輩風でも吹かせているのだろう。
「ジャンバール、わたしも手伝うわ。」
駆け寄って一緒に倉庫から荷物を運び出す。
「いや…、これは俺の仕事だ。モモは気にしなくていい。」
こんなことを手伝わせるわけには…、と慌てる。
「あら、掃除は新入りの仕事なんでしょう? なら、1番の新入りはわたしね。」
そんなジャンバールにモモはイタズラっぽくニコリと笑う。
実はモモは、一度ジャンバールとゆっくり話してみたいと思っていた。
昔、モモがハートの海賊団であったとき、彼は仲間にいなかった。
だから当たり前だけど、彼だけは本当に「はじめまして」なのだ。
「…そうだな。なら、新入りのモモ、一緒に手伝ってくれるか?」
「喜んで!」
ジャンバールはモモの申し出をありがたく受け入れ、2人で倉庫の掃除を始めた。