第38章 シャボン玉の島
どうやら、ローに大きな勘違いをさせてしまったようだ。
モモがシャボンディ諸島の街についていかない理由は、単純に政府の目につくのを恐れてのこと。
ローが言うように、彼を避けて…とか、一緒にいるのが嫌だから…とか、そういう理由ではない。
けれど、ローの立場になって考えてみれば、そう思われても仕方ないのかもしれない。
モモの態度が引き起こした誤解だ。
「都合っていうのは…、本当に個人的な理由なの。だから…、気にしないで欲しい。」
こんな曖昧な理由じゃ、さらに不審思われて突っ込まれるかな? と思ったけど、ローはしかめっ面のまま、一言だけ尋ね返してきた。
「…本当に、それだけか?」
「ええ。」
今日のローはやけに食い下がってくる。
きっと、彼なりの気遣いだろう。
「なら…、いい。」
ローはそれ以上、理由を追求することなく、寄りかかっていた壁から背を離した。
一応仲直りをしてみたつもりだが、なんだか妙な気まずさが残る。
「…えっと、コハクのことをよろしくね。あの子、街なんて初めてだから、きっと人の多さに驚くわ。」
「ああ。」
話しかければ応じてくれるから、怒っているわけではなさそうだ。
「政府のお膝元ってことは、海兵たちもウロウロしてるんでしょ? …気をつけてね。」
「誰にモノを言ってやがる。見つかったところで、ヤツらに俺をどうこうできるわけねェよ。」
それはそうだと思うけど、騒ぎを起こすと船のコーティングに支障が出るんじゃないのかな。
ローはコソコソしたりするつもりはないようだが、やっぱり自分は残ると言っておいて良かったと思う。
諍いの種は、いつどこに眠っているかわからないのだから…。
謝罪の言葉を言えなかったローと、自分の正体を話せなかったモモ。
2人はそれぞれの想いを抱えたまま、共に仲間の待つデッキへと上がっていった。