第38章 シャボン玉の島
悪かった、と一言謝ればモモは許してくれるだろうか。
誰かに許されたいだなんて思ったこともなかったから、こんな時、どうしていいかわからない。
考え込むように黙ったままのモモが怖い。
彼女はどう思っているか知らないが、この1週間、モモの態度はだいぶ堪えた。
今まで他のクルーたちとケンカになり、揉めてしばらく口を利かなかったことだってあったけど、こんなにも様子が気になることはなかったのに。
それは、彼らがどんなにケンカしても、自分のもとを離れていないという自信があったからかもしれない。
でも、モモはそうじゃないのだ。
自分とモモの間にはそんな信頼は存在しない。
あるのはコハクという弟子の存在だけ。
彼だけが、自分とモモを繋ぎ止めている。
コハクがいなければ、彼女は自分の傍になどいないのだ。
それほど、薄っぺらい関係。
どうにかしなければ。
彼女に、傍にいて欲しい。
そのためには、今までプライドでガチガチに固められた頭くらい、いくらでも下げる。
モモの答えはまだ聞けてないけど、待ちきれなくて謝罪の言葉を口にしようとする。
「……悪かっ」
「別に怒ってないわ。」
決意の謝罪と、モモの答えが見事に重なった。
おかげでせっかく出た謝罪の言葉が引っ込んでしまう。
いや、それより彼女は今なんと言ったか。
「……なんだって?」
「だから、別に怒ってないの。」
やはり聞き違いではないらしい。
「そんなわけあるか。お前は今の今まで、俺を無視しやがったじゃねェか。」
ああ、しまった。
こんな言い方をしたいわけじゃないのに、責めるような言い方になってしまう。
案の定、モモは申し訳なさそうな顔をした。
そんな顔をさせたいわけじゃない。
悪いのはローの方だ。
「ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったの。」
ローが口にするはずだった謝罪の言葉を、反対にモモが口にした。
これじゃ彼女が悪いみたいになってしまう。
くそ、どうしてこうなる。