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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第38章 シャボン玉の島




ローは壁に背を預け、腕を組みながらモモを見下ろしていた。

一見平静を装っているが、心臓の音は先ほどからやかましく鳴り響いている。

理由はわかっている。

ついに聞きたかったことを彼女に聞いたからだ。


『本当は、俺の近くにいるのが嫌なだけじゃねェのか。』

ずっとずっと、モモに聞きたかったこと。


つい1週間前、モモをひどく怒らせた。

あんな場所であんな行為をしてしまったのだ。

怒って当然だろう。

そして、嫌われて当然だ。

そう思うと、ものすごい勢いで心が冷えていった。

そんなわけないと笑われるかもしれないが、ローはなぜだか、モモは絶対に自分を嫌わないと思っていた。

だからいつも強引に彼女に迫ったし、自分の欲求を押し付けた。

そんな絶対の保証なんて、どこにもありはしないのに。


しかし、ローがその事実に気がついたのは、辛くもモモに頬を叩かれた時だ。

頬を叩かれたことよりも、そうまでして怒ったモモに驚いた。

考えてみれば当然のこと。

恋人でもない男に身体を触られるなんて、暴力に等しい。

なぜ自分は、そんなことにも気がつけなかったのだろう。

なぜ、自分がモモに触れるのは、当たり前の権利だと思っていたのだろう。

その結果、嫌われてしまうことだってあるのだと、考えもせずに。


あの日以来、モモはローを避け続けた。

その態度を見れば、彼女に嫌われてしまったことは一目瞭然。

しかし、ローは今の今までそれを確かめることができず、目を逸らし続けた。

モモに嫌われたと知るのが怖かったからだ。


“怖い”だなんて感情を持ったのは何年ぶりのことだろう。

あのドフラミンゴを目の前にしたときだって、こんな感情は持たなかったのに。

それなのに、今、この瞬間、モモの答えがこんなに怖い。

そんな情けない胸の内を悟られたくなくて、ローは必死にしかめっ面で心情を隠した。



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