第38章 シャボン玉の島
(わたしがセイレーンであること、みんなに言った方がいいよね…。)
言わなくてもこれから一緒に過ごすうち、いつかはバレるだろう。
もう仲間なんだし、隠す必要もない。
それに、彼らの人となりはよく知っている。
例えどんな事実を告げようとも、みんなが態度を変えないってことは、すでにわかっているのだから。
(ああ、でも今のタイミングで言ったら、みんなに心配掛けちゃうかしら。)
モモを守るために、船番の人数を増やすかもしれない。
そうなったら、街へ出掛けられなくなる人が出てしまう。
こんなに楽しみにしてるのに…。
そんな事態は避けたい。
(別に、今言わなくてもいっか…。)
モモがカミングアウトをするタイミングを悩んでいると、ひとり事情を知るコハクが名乗りを上げた。
「…オレも船に残る。」
ジャンバールがいるとはいえ、モモを残していくのは心配だ。
みんなはモモの事情を知らない。
全てを知っている自分がモモを守らないと。
「あら、ダメよ。コハクはちゃんと行ってらっしゃい。」
しかし、すぐさまモモに却下された。
「でも、母さん…。」
「あなたまで船に残ったら、楽しい思い出がなにも作れないわ。わたしの代わりにシャボンディ諸島を満喫してね。」
帰ってきたら楽しい話を聞かせて、と言われてしまえば、コハクは頷くしかなくなってしまう。
「それに、ローの弟子になったんでしょう。一緒に行ってしっかり学んできてね。」
チラリとだけローに視線を移すと、目が合う。
「……。」
ローは物言いたげにこちらを見つめるが、先に視線を外したのはモモの方だった。
「…わかったよ。」
渋々納得した様子のコハクに笑顔を向ける。
「ああ、ちょっと待って。リュックくらい持って行かないと。もしかしたら荷物が増えるかもしれないし。」
冒険に手ぶらは厳禁。
モモはコハクのリュックを取りに、一度船内へ戻った。