第38章 シャボン玉の島
船は島の20番グローブに停泊し、錨を降ろした。
「わ、すげー! シャボン玉がいっぱい…。あれ、全部ヤルキマン・マングローブの樹液なのか?」
島はもちろん、空にいたるまで、大きなシャボン玉が漂って辺りはとても幻想的だ。
「そうよ。薄い膜に見えるけど、すごく強度があるの。…ほら。」
船の方に流れてきたシャボン玉を指でつついてみせる。
強めに押してもシャボン玉は割れることなく、ふわふわと宙を漂う。
それを見て、コハクはえいッとシャボン玉に飛び乗ってみた。
「あ、見て母さん、乗れる。」
強力な樹液で出来たシャボン玉は、子供の身体くらい楽に乗せてみせた。
「当たり前ッス。シャボンの力はこんなもんじゃねぇから、楽しみにしてな。」
街にはシャボンを利用した様々な施設がある。
きっと2人ともびっくりするに違いない。
「息抜きはいいが、コーティングのことを忘れんじゃねェぞ。まずはコーティング職人を探すのが先だ。」
特別な技術を要するコーティングは、優秀な職人でないと施すことができない。
ヘタな職人に依頼すると、この先の航海で命を落とすことだってある。
多少金がかかっても、職人選びは慎重に行わなければ。
「上陸するぞ、準備しろ。」
「「アイアイサー!」」
全員が上陸のために準備する中、ジャンバールだけが足を止める。
「船長、俺は船番をしようと思うが…、いいか?」
どうやらジャンバールはこの島に降りたくない様子だ。
「ああ、頼む。」
モモとコハクは首を傾げるけど、ローや他のみんなはわかっていたようで、それぞれ頷く。
「あ…。わたしも船に残るわ。」
ついでにとばかりに手を挙げる。
「「えッ!」」
今度はコハクだけが納得顔で、他の全員が驚きの表情をした。
「なんでだよー!? せっかくの島だぜ? 一緒に行こうよ!」
モモとコハクにシャボンディ諸島の楽しさを教えてあげようと思っていたシャチは、大げさなほどに嘆いた。
「ありがとう。でも、冒険は次の島までとっておくわ。」
いつどこで海軍と出くわすかわからない島に上陸することなんてできない。
みんなに申し訳なく思いながら、モモは困った顔で笑った。