第38章 シャボン玉の島
「く……ッ」
チカチカするような快楽の中、ローの苦しげな呻き声が耳に届く。
のろりと視線を向けると、ローが張り詰めすぎた己の屹立を引き出し、自ら慰めているのがわかる。
自分に興奮してくれるのは純粋に嬉しい。
どんな理由にせよ、少しだけでも魅力があるってことだから。
でも、それは“わたし”に魅力を感じてのこと?
それとも…--。
モモの達した表情に、いよいよ限界を感じたローは、堪らず己自身を慰めなければならなかった。
本当なら今すぐ身体を重ねたい。
でも、先ほどモモが言った“愛人”の言葉がローをギリギリのところで踏みとどまらせた。
ローとて、彼女を愛人にするつもりはない。
それでは、いったい彼女をなににしたいのか?
薬剤師としての能力に惚れ込み、仲間にしたかったのは本当のこと。
けれどそれは、無理やりにでも船に連れ込んだ理由にならない。
ローは今まで、互いの合意無しに誰かを仲間に取り入れたことは1度もないから。
海賊になるつもりのないモモを、どうしても諦められなかった理由。
それは…。
「ロー…。」
快感の波に翻弄され、未だ焦点の合わない目をしたモモがローを呼んだ。
彼女が自分の名を呼ぶたび、嬉しいような、それでいて寂しいような気分になるのはどうしてなのだろう。
ぐったりとしながらこちらを見つめるモモの頬に触れた。
「…わたしは、あなたのなに?」
先ほど自分自身に問いかけたばかりのことを、今度はモモから問われた。
撫でようとした指がピクリと止まる。
自分にとってのモモは…。
新しく増えた仲間。
そんな模範解答が浮かんだけど、口にするこはできなかった。
その答えが正しくないことがわかっていたから。