第6章 戦いの中で
「ホワイトリストにはランクがあってな、セイレーンは最高ランクの手配者なんだよ。そんな女、連れてるだけで海軍に追い回されるぜ? さっさと手放した方が利口だと思うが?」
「悪いが、さっきも言った通り、アレは俺のものだ。誰であろうと渡すつもりはねェ。」
「そうかい。もうちょっと頭の良い男かと思ったが、案外バカなんだな。」
ならば奪うだけ、とアイフリードは剣に手をかける。
「…ひとつ聞くが。」
「あん?」
「それなら、なぜお前はアイツを手に入れようとする。」
連れているだけで海軍に追い回されるなら、アイフリードにとっても得はないのではないか。
「俺はなぁ、ありとあらゆる宝を手に入れてぇんだよ。それが財宝だろうが、人間だろうがな。それに、俺は一度目を付けたモンは絶対に逃がさない主義だ…。」
アイフリードは、船内のドアの隙間から、こっそり外を窺う人影に気づいていた。
「あのガキを最初に見つけたのは、俺だ。なあ、小娘。俺を覚えているか?」
ドーン!
2度目となる砲撃音と揺れがモモを襲った。
(きゃあ…ッ)
揺れに耐えかねて本棚からドサドサと本の雨が降る。
身の危険を感じ、モモは船長室を出た。
(…っと、ローの言いつけを破っちゃった。)
でも不可抗力だ。
本の生き埋めにはなりたくない。
それに、さっきからやたら静かだ。
もしかしたら逃げ切れたのかもしれない。
(…ちょっとだけ。)
みんなのことが心配だったし、状況が気になったので、少しだけ様子を見に行くことにする。
無事を確認したら、すぐに戻ればいい。
そう決めて、モモはそっとキッチンへ上がった。
なにやら話し声がする。
残念ながら逃げられたわけじゃなさそうだが、戦闘も始まっていない様子だった。
会話の内容が気になり、キッチンのドアを少しだけ開け、外を窺う。
「なぜ、お前はアイツを手に入れようとする。」
ローが誰かに尋ねた。
「俺はなぁ、ありとあらゆる宝を手に入れてぇんだよ。それが財宝だろうが、人間だろうがな。それに、俺は一度目を付けたモンは絶対に逃がさない主義だ。」
どこかで聞いたことのある声だ。
古い記憶を呼び起こす。
相手の顔を確認しようと覗き込むと、男と目が合った。
男の顔に、見覚えがある。
息が止まった。