第6章 戦いの中で
ローが船外へ出ると、まさに2発目の砲弾がこちらに飛んで来るところだった。
“ROOM”
砲弾の方向に突出したサークルを張る。
“タクト”
砲弾がサークル内に入った瞬間、弾の軌道を変更して逆に相手に送り返してやる。
ドーン!
見事、相手方の船に命中した。
ローが能力者とわかったのだろう、砲撃は止み、船は速度を上げて接近して来る。
「キャプテン、どうする? 今なら撒けるけど。」
相手の方が大きな船だが、機動性ではこちらが有利。
速度を上げれば逃げ切れるだろう。
「売られた喧嘩に尻尾巻いて逃げられるか。迎え撃つぞ。」
「「アイアイサー!」」
敵船はあっという間に近づき、船に乗った人間の顔がわかるまでになった。
「お前が『死の外科医 トラファルガー・ロー』か。」
船長らしき男が声を掛けてきた。
(どこかで見た顔だな…。)
40代と思わしき大柄な男。
おそらく手配書で見たのだろう。
「そうだが? 俺の船を襲うなんざ、いい度胸じゃねェか。売られた喧嘩は買うぜ。」
「まあ、そう言うな…。俺は『略奪王 アイフリード』だ。お前の船から頂きたいものがある。」
「『略奪王 アイフリード』!…船長、懸賞金1億5千万の大物ですぜ。」
国や街、海賊、海軍にいたるまで、ありとあらゆる宝を略奪する海賊船の船長。
それがアイフリードだ。
「で? なにが欲しいって?」
例え米粒ひとつでもやるつもりは無いが。
「セイレーンを寄越せ、その船に乗っているのは知っている。」
セイレーン…モモのことだ。
アイフリードの要求に、ローは眉間の皺を深くする。
「やれねェな…アレは俺のものだ。」
「そうかい。ホワイトリストの商品なんざ、手元に置いても得しないぜ?」
「ホワイトリスト…?」
聞いたことのない言葉だ。
それもモモのことを『商品』と言った。
「なんだ、知らねぇのか。海軍にゃ世界に出回らない秘密裏に作成された手配書ってモンがあんだよ。それがホワイトリストだ。」
そんなものがあるとは初耳だ。
「だいたいが悪人でも海賊でもない、ただの一般人だ。だが、リストに上がる人間は海軍にとって利用価値のあるのさ。」
それがモモだと言うのか。