第38章 シャボン玉の島
ガ…ッ。
突如、腕を掴まれてビクリと身体を跳ねさせた。
「び、びっくりした…。なに…?」
黙ってたと思ったら、急に乱暴になって。
ローの考えていることは、本当にわからない。
深刻な雰囲気に息を飲むと、グイッと強く引っ張られた。
「きゃ…ッ!」
倒れるようにローの胸に飛び込むと、そのまま身体を抱え上げられ、脚が宙に浮いた。
「や…ッ」
抱き上げられるのかと思ったけど、次の瞬間には背中にテーブルの硬さを感じて、ゴロリと転がされた。
「え…、え…?」
テーブルに寝かされたモモは、今がいったいどんな状況なのかわからず、目を白黒させた。
そうこうしている内に、ローはモモの脚を開かせ、その間に身体を割り込む。
「ちょっと、なにしてるの…ッ?」
膝下丈のスカートといえど、そんなに脚を開かされては太股が見えてしまう。
しかし、閉じたくてもローの身体が邪魔をして閉じることができない。
「そこ…、どいて。」
どういうつもりか知らないが、この体勢はどうみたって先ほどの約束に反する。
「それはできねェ相談だ。」
「なに言ってるの…?」
ああ、嫌だ。
その目、冗談でしょう?
幾度となく向けられたことがある、その目。
その意味を、モモは正しく理解している。
今、彼の瞳に宿るのは、欲情の光だ。
「煽ったのは…お前だ。とりあえず、責任、取ってもらおうか…?」
先ほどのローの言葉を借りるなら「ふざけんな!」と叫びたい。
モモがいつ、どこで煽ったというのか。
「あ、煽ってなんか…。どいてよ、ここをどこだと思ってるの?」
心中の叫びとは裏腹に、モモは努めて冷静に言った。
時と場所を思い出してくれれば、ローも冷静さを取り戻してくれると思ったから。
しかし、その考えは“甘い”としか言いようがないことを思い知らされる。
「俺の船だ。…だから、俺がどこでなにをしようと、自由だろ?」
凶悪な目をして、この船の主は優雅に笑うのだった。