第38章 シャボン玉の島
仲間となったのなら、節度のある関係を。
そう申し出たモモに、ローはたいそう顔をしかめた。
そして悩むように腕を組んだまま、しばらく黙り込んだ。
え…? ここは悩むところじゃないでしょ。
むしろ即答で「わかった」と言って欲しいところ。
そう言い放ちたかったけど、沈黙を続けるローが口を開くのを辛抱強く待った。
「ハァ…。」
ため息ひとつ落とし、やれやれといった様子の彼に「ようやくわかってくれたのか」と安心しかけた。
しかし、やっぱりわかっていないようで…。
「…キスはいいだろ。」
「は…?」
え、どうしてそんな答えになった?
「ダメに決まってるでしょ。」
まさかキスは挨拶、とか言い出すんじゃないでしょうね。
「キスくらい、別にいいじゃねェか。」
キスくらいって…。
やはりモモとローには多少温度差があるらしい。
残念ながらモモは挨拶でキスができるほど、都会慣れしてはいないのだ。
「仲間はキスなんかしないでしょう。」
少なくともモモが思う仲間は、そんなことをしない。
「…場合によっちゃ、するんじゃねェか。」
「え、嘘…。」
当然のように言うローに、「あれ…、自分がおかしいのか?」と思わず首を捻りたくなった。
ハートの海賊団は、いつの間にかそんな風潮になってしまったのか。
「…じゃあ、シャチやペンギンにもしないとダメなのかしら。」
仲間同士のキスが挨拶ならば、当然そうなってしまう。
しかし、ボソリと言ったその呟きに、ローは目をかっ開いた。
「ふざけんじゃねェよ。そんなことしてみろ、タダじゃおかねェ。」
とりあえず、した現場を見た瞬間、シャチとペンギンの解体ショーが始まることだろう。
「なに言ってるの…?」
仲間同士がキスをすることもあるって言ったのは、ローの方なんだけど…。