第38章 シャボン玉の島
「……ッ」
思わぬ一撃を額に食らって、やむを得ず唇を離した。
ついでに緩んだ腕から抜け出して距離をとった。
「…なにしやがる。」
じんじんと痛む額をさすりながらギロリと睨まれる。
「な、なにするのって言いたいのはこっちよ!」
散々身体を好き放題弄ってくれちゃって、なんだと思っているのだ。
キスだけならともかく、…いや、キスもダメだけど、胸まで触られた。
「まだなにもしてねェ。」
「なに言ってるの! したじゃない!」
どの口がそんなことを言うか。
唇にも胸にも、まだローの手の感触が残ってる。
「それだけじゃねェか…。」
まだ、それだけしかしていない。
むしろ、スルのはこれからだったのに。
「そ、それだけ…!?」
冗談も大概にして欲しい。
いつからローは、そんな手の早い男になってしまったのか。
6年経ったら人はこうも変わってしまうものだろうか。
彼が軽い男となってしまったことに、心が沈む音が聞こえたが、今はそれより言っておかなければいけないことがある。
「ロー、もう…こういうことをするのは止めて。」
「こういうこと…?」
腕を組み、眉を寄せた。
「こういうことってのは、どういうことだ。」
「ええ…ッ?」
本気でわからない様子のローに、信じられない…と狼狽える。
「全部よ、全部! さっきまであなたがしてたこと全部!」
「なんだと…?」
今度はローが信じられないように目を見開く。
「わたしたちは、仲間になったのでしょう? 仲間はこんなことをしない。そうでしょ?」
ローは自分を“薬剤師”として仲間に入れたはずだ。
決して娼婦なんかじゃない。
先日はほとんど強引にコトを進められてしまったが、仲間になった以上、ここのケジメはしっかり付けておきたかった。