第6章 戦いの中で
それからしばらくの間、モモは勉強に励んだ。
もちろん自分の役割である仕事はキチンとこなしたが、それ以外の時間は全て読書に費やした。
学べることは、まだまだたくさんある。
あれからローとは、別にどうとなったわけじゃない。
あの時こそ怒りが爆発したものの、モモは怒りをそんなに引きずることができない性格なのだ。
本を読んでわからないところがあればローに聞くし、本を借りるときは例の条件も守っている。
ただ、ローはあれ以来、過度なスキンシップを求めなくなった。
約束のキスも、結局僅かに触れるだけになってしまっているが、彼は文句を言わない。
それから就寝時も、以前は目覚めるとベッドに運ばれ、ローに抱きしめられていたが、最近はベッドに運ばれた後、ローはソファーで眠りについている。
(なんか、急に変わるから…、少し寂し--)
いやいやいや!
なにを言ってるのか、そんなわけないじゃないか。むしろ清々してる。
「なにひとりで百面相してんだよ、変なヤツめ。」
見られていたらしい。
なんでもない! と開いた本で顔を隠す。
「勉強するのは悪くねェが、あんまり今詰めすぎんなよ。」
ローの手がふわりとモモの頭を撫でた。
そのとき…。
ドーン!
激しい砲撃音と共に、船が大きく傾いだ。
「!!」
突然の揺れにバランスを崩し、転びそうになったところをローに支えられる。
(あ、ありが…。)
礼を言う前に慌ただしくドアが開かれる。
「船長、襲撃っス!」
「だろうな…。海軍のヤツらか?」
「いえ、海賊っス。」
海賊が略奪目的で同業者を襲撃することは珍しくない。
「ほぅ…、それじゃ、襲う船を間違えたってことをわからせてやろうじゃねェか。」
「ハイ!」
「モモ、お前はこの部屋を出るなよ。」
大丈夫だ、と頭をひと撫ですると、ローはペンギンと共に部屋を出て行った。