第38章 シャボン玉の島
海底10000メートル。
想像もできない海の底に、新世界の入り口はあるという。
ぐるりと世界を1周しているレッドラインには、唯一穴が空いている場所があって、それが新世界の入り口なのだ。
しかしそこへたどり着くには、先に言ったとおり、10000メートルもの距離を潜らなくちゃいけない。
いくら潜水艦と言えども、船がそんな距離を潜れるはずがない。
そんなふうに思うけど、それを可能にするのが“コーティング”だ。
船に特殊な膜を張り、海底10000メートルでも水圧に耐え、船ごと穴をくぐるのだという。
そんなおとぎ話のような新世界への入り方に、モモは目が点になった。
まったく、久しぶりの冒険だというのに、しょっぱなからいろいろと飛ばしてくれる。
海底10000メートルなんて言われても、現実とかけ離れすぎてていまいち話についていけない。
しかし、ついていけないのはモモだけのようで…。
「すっげー、10000メートルも潜るのかよ。深海魚、いるかな?」
コハクはというと、頼もしいことに目をキラキラさせながら楽しみにしている。
「深海魚どころか、魚人に会えるぜ、コハク。」
「…魚人?」
シャチの言葉に、コハクだけではなく、モモまでも反応した。
「新世界の入り口には、魚人島があるんだぜ。」
「魚人島…!」
なんと、10000メートルもの海底には島が存在するのか!
そういえば、天空にそびえる空島は、上空10000メートルに存在すると聞いたことがある。
彼らと語り合った空島に、モモは行くことができなかったけど、逆方向の海底の島には行くことができるのだろうか。
『見たことのない景色を、一緒に見よう。』
あの時した約束が、今度こそ果たされる予感がした。