第38章 シャボン玉の島
ふぅ…、なんだか嫌な汗をかいてしまった。
例え冗談だったとしても、あまり笑えるものじゃない。
考えてみたら、昔はよくローと同じ部屋で寝起きできたものだ。
あの時も半ば脅されるようにして住まわされたけど、今となってはローと2人っきりの空間にいることですら緊張してしまう。
だってほら、ずっと会えなかったわけだし、なんというか…いざ本物を目の前にするとどうしていいのかわかなくなるから。
熱くなった顔の火照りを冷まそうと、パタパタと手で顔を煽ぎながら部屋の中を歩いていると、部屋の壁にひとつのドアが付いているのを見つけた。
「…? ロー、このドアはなぁに?」
「ああ、隣の部屋に繋がるドアだ。」
「え、そうなの?」
どうやらこの部屋は隣の部屋と続きになっているらしい。
「隣はなんの部屋?」
ここがもともとローの作業部屋なら、隣は医務室かなにかだろうか。
しかし、ローの口から出た答えは、モモの度肝を抜くものだった。
「俺の部屋だ。」
「………はい?」
今、なんて言った?
誰の部屋だって?
零れ落ちそうなほど瞳を見開き硬直するモモに、ローは再び同じことを言ってやる。
「隣は俺の自室だ。寂しいのならいつでも入ってきたらいい。」
「……。」
いや…。
いやいやいや…。
えっと、ちょっと待って。
つまり、なんだろう。
そのドアの向こう側には、常にローがいるってこと?
「…ぅええぇえぇッ!」
しばらくの間を開けて、大絶叫した。
その反応を予期していたかのように、ローがニヤリと笑った。
その笑い、絶対確信犯でしょう!
「ほ、他に部屋は…。」
「ねェな。」
ついさっきやったばかりの会話をもう1度繰り返したけど、今度は即答で返されてしまった。
ああ、こんなことなら無理にでもコハクを引きとめれば良かった…。
遠くでコハクたちの笑い声が聞こえる。
おそらく、目を覚ました仲間たちと部屋のことで楽しく談笑でもしているのだろう。
今さら、やっぱり同じ部屋にいて…なんて言えない。
冒険の始まりは、前途多難だ…。