第38章 シャボン玉の島
「…ここだ。」
ローに案内されたのは、船内にある部屋のひとつ。
その部屋は新入りのモモたちが使うには十分すぎるほど広い。
モモの仕事部屋と兼用なのか、部屋には薬を調合するための作業スペースも備え付けてある。
ここはどことなく、以前の海賊船にあったローの自室に近い雰囲気を感じさせた。
「広い…。本当にこの部屋を使っていいの?」
「ああ。ベッドは予備がなかったが、次の島で揃えてやるから、それまで2人で使ってろ。」
指さされたベッドは、モモが家で使っていたものより倍は大きい。
これなら2人で寝たって十分すぎる。
しかし、こんなにも良待遇だというのに、コハクは拒否の声をあげた。
「オレはいいや。」
「…? いいって、なにが?」
ベッドで寝るのは遠慮するということか。
確かにこの部屋にはソファーもあるけれど、そんなに一緒に寝るのは嫌かな?
息子に拒絶され、軽くショックを受ける。
そんなモモの心中を察したのか、コハクは「違うよ」とすぐさま否定した。
「オレはみんなと一緒の大部屋でいい。そこならベッドだって余ってるんだろ?」
「…まァな。だが、お前が思っているほど居心地のいい場所じゃねェぞ。」
むさ苦しいし、男くさい。
それに、寝相もいびきも最悪で、ベポにいたっては寝言まで言う。
静かな島でモモと2人暮らしていたコハクには、少々難易度が高い。
「いいんだ。オレは今日からハートの海賊団の一員だろ? なら、みんなと同じ部屋がいい。」
特別枠として迎え入れられるのではなく、みんなと同じラインに立って、平等に扱われたい。
まだまだ子供の自分だけど、胸張って言いたいから。
オレは一味の仲間で、海賊だ! って。