第38章 シャボン玉の島
半ば脅すような勢いで2人と1匹の仲間を得たハートの海賊団の船は、大海原をぐんぐんと進む。
そして海賊船の上では宴を終えたばかりの男どもがゴロゴロ転がっている。
「ったく、だらしねーヤツら。海賊ってのは、みんなこうなのか?」
コハクは浴びるように酒を飲み、気持ちよさそうムニャムニャ眠るベポ、シャチ、ペンギンの3人を眺めながら呆れるように言った。
「あら、みんなじゃないでしょう?」
宴の後片付けをしながら呟きに反応したモモが、チラリとローとジャンバールを見る。
ローは相変わらずのザルで、大量の酒を飲んだというのに顔色ひとつ変えずに椅子に座り本を読んでいる。
そしてジャンバールはというと、潰れたベポに代わりログポースを見ながら航路の確認をしていた。
ローはともかく、この船にはようやくジャンバールという“常識”を持ったクルーが加わったらしい。
常識はずれのクルー3人の子守は大変だろうに、ずいぶんと頼もしいものだ。
「ああ、そうだ…。お前らの部屋を教えていなかったな。」
「部屋…?」
思い出したように言ったローに、モモは首を傾げた。
「まさかコイツらと同じ部屋にするわけにいかねェだろう。…ついて来い。」
読みかけの本をパタムと閉じて立ち上がる。
その様子を見てジャンバールは、船長が読書を中断してまでなにかをするとは珍しい…と内心思った。
それだけで、ローがモモとコハクを優遇していることがわかる。
もしかしたら、今この場で1番舞い上がっているのはローなのかもしれない。
感情が表に出ず、なにを考えているかわかりづらい船長。
この船では最も付き合いの短い自分だが、そのくらいの気持ちはわかるようになっていた。
生きる上で、なるべく大切なものを作らないようにしているロー。
そんな彼に、大切なものができるというのは、悪くないことだと思った。