第6章 戦いの中で
(ほんとに、ほんっとに、最低!)
モモは本を一冊胸に抱きながら、烈火のごとく怒っていた。
「気持ち良かったろ? なら、いいじゃねェか。」
(いいわけ、ないじゃない!)
いや、そもそも抵抗できなかった自分も悪いのだが。
(でも、でもあんなこと…ッ)
「うるせェな、俺の女になにしようが勝手だろうが。」
その言葉に眉をひそめる。
『俺の女』
ズキンと胸が痛んだ。
ローは度々そんなふうに言う。
けど、それを聞く度、心が痛む。
(別にそんなふうに思ってないくせに…。)
当初、ローは言ったのだ。
女を船に乗せるとクルーに諍いが増えると。
だから自分の女にするって。
ただ、それだけの理由。
(わたしだって、別に…。)
ローは大切な『仲間』。
そう、他の3人と同じ…。
そこに特別な感情なんて…ない。
ギュウッと本を強く抱きしめて俯いた。
「…なんだ、そんなに嫌だったのか?」
ひどく落ち込むモモを怪訝に思って近づいて来る。
(…ローなんか、知らない!)
キッと睨みつけ、そのまま部屋を出て行った。
取り残されたローは、バタンと閉められたドアを見つめながら、少しやり過ぎてしまったか…と感じていた。
モモが船に戻ってからというもの、彼女が可愛くてしょうがない。
傍にいれば落ち着くし、姿が見えないとつい探してしまう。
今までローが付き合ってきた女は、身体だけの関係、もしくは利害が一致した打算だらけの関係だった。
モモみたいに、ただ純粋に愛しいと感じる女は初めてだ。
だからこそ、加減がわからない。
触れたいと思うと、次にキスしたくなる。
キスをすると、もっと先に進みたくなる。
もっと言えば、今すぐ彼女を奪いたい。
でもモモは処女だ。
そんなマネをしては嫌われてしまうかもしれない。
(この俺が、女相手にビビるとは情けねェな…。)
とはいえ、前回といい、今回といい、おあずけ状態で我慢している自分を少しは褒めてもらいたい。
(だいたい、キスひとつであんな表情をするアイツも悪い。)
あんな扇情的な表情をされては、手を出さない方がおかしい。
しばらくはモモと距離を置いた方がいいだろう。
さもなければ、本当に押し倒しそうだ。