第37章 冒険の海へ
「おーい、お待たせ~!」
荷運びのために、あとから家を出たベポとシャチ、ペンギンがやってきた。
手伝ってくれたくれたことに礼を言おうと振り向くと、彼らの姿にギョッとした。
3人が3人とも、大荷物を背負っている。
「ちょ、ちょ…。そんなにたくさん、なにを持ってきたの?」
昨日あれだけコハクの荷物を運び込んだのに、なにをそんなに持ち出してきたのか。
もともとモモの家にはそんなに物がない。
今頃、家の中は空っぽになってしまっているんじゃないだろうか。
「母さん、しばらくここには戻ってこれないんだし、必要なものを全部持ってってもいいだろ?」
「それは…まぁ、いいけど…。」
そんなふうに言われたら、大切な息子の門出だ、ダメとは言えない。
けれど、明日からの生活にモモは若干不安を抱く。
次にメルディアが来るのはいつだろう。
彼女に頼んで、入り用なものは早急に揃えてもらわねば。
大荷物を背負い、ベポが船へ乗り込んだ。
続いてシャチが、ペンギンが…。
気づけば海岸には、モモとコハクとヒスイだけが残っていた。
「じゃあ、そろそろ行くよ…。」
「…うん。」
旅立ちのとき、別れのときだ。
コハクとヒスイをまとめて抱きしめる。
ああ、なんて幸せなことかしら。
コハクがローの船で旅立っていく。
こんな結末、少し前の自分なら、夢にだって想像できなかっただろう。
最高のハッピーエンド。
だから、笑え。
ツンと鼻の奥が痛くなったけど、根性で涙を引っ込めた。
笑ってさよならするって決めたもの。
コハクがわたしを思い出すとき、笑顔のわたしでいて欲しいから。