第37章 冒険の海へ
翌日、旅立ちの朝。
いざ海へ…というだけあって、バタバタする朝だった。
「えーっと、コハク。あとは おれが運んでおくから、先に船へ行ってなよ。」
「うん。ベポ、サンキュー!」
そんな2人のやりとりに、モモは はて? と首を傾げた。
昨日、あれほど船に荷物を運んだのに、まだ荷物が残っていただろうか。
「ベポ、わたしも手伝うわ。」
息子の世話を任せっきりじゃ申し訳ない。
「あー…、ううん、大丈夫。その…おれ、力持ちだから!」
モモの申し出に、ベポは丸わかりなほど慌て始める。
力のない自分が手伝うというのは、そんなに迷惑だったのか…。
「…母さん。母さんが手伝っても、転んで荷物をぐちゃぐちゃにするのが関の山だって。」
「そ、そんなこと…。」
ないと言い切れないのが、悲しい。
「ほらほら、新入り組はさっさと船へ行きな~。あとは俺たちがやっとくからよ。」
「そうッスよ、長年住んでた島に別れでも言っておきな。」
仲間たちに追い出されるように家から出され、モモはしぶしぶ手伝いを諦めてコハクと共に船へと向かった。
船に着くと、すでにローとジャンバールが乗船しており、出航の準備をしていた。
そちらを手伝おうかとも考えたが、出過ぎたマネはしない方がいいだろう。
そもそもモモには、船へ足を踏み入れる資格がない。
みんなとは、ここでお別れしなくては。
(最後にもう一度だけ、ローと話したかったな…。)
感動的な別れなんて期待していないけど、せめて「さよなら」と「ありがとう」を伝えて、握手でもできたら…。
そのくらい望んでも、罰は当たらないんじゃないかな。
けれど、そんなモモの気持ちを知ってか知らずか、ローがこちらを向くことはなかった。
結局、ローにとっての自分は、たまたま立ち寄った島で出会った都合のいい女。
それだけなんだ。
ズキン…。
わかっていたはずなのに、ひどく胸が痛んだ。