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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第37章 冒険の海へ




コンコン。

少しだけ感傷に浸ってしまっていたモモは、ノックの音にハッと我に返った。

「はい…?」

ガチャリ…。

誰だろうと返事をすれば、ドアを開けて顔を覗かせたのはコハクだった。


「コハク…? どうしたの?」

「うん…、その…。」

なんだか歯切れ悪く入ってきたコハクは、少し照れくさそうだ。

「母さんに…、ちゃんとお礼を言おうと思ってさ。」

「お礼…?」

改まって言う息子に、ぱちくりと瞬いた。

「うん。…母さん、今までオレを育ててくれてありがとう。」

「え…。」

嫌だ、なにを言い出すの?

そんなこと言われたら、目の奥が熱くなってきてしまう。


「それから、オレを島の外へ出そうとしてくれて…オレのことを想ってくれて、ありがとう。」

「……ッ」

泣いちゃいけないと思うのに、じわじわと滲む視界が止められない。

「オレ、母さんの期待に応えられるくらい、ローのもとで立派な医者になるよ!」

「ぐすッ、…うん。」

「泣くなよ、母さん。これから忙しくなるんだから、泣いてるヒマなんかないよ?」

確かに、コハクとヒスイがいなくなれば、全てのことを自分の力だけで解決しなければならない。

泣いてなんかいられないよね。


それでも堪えきれず溢れた涙を、コハクは慣れた手つきで拭ってやった。

これじゃ、どっちが子供かわからない。

「大丈夫だよ、オレはいつだって母さんの傍にいるから。…だから、寂しくないよ。」

心の中を見透かされて、恥ずかしくなる。

そうよね、離れてたって心はいつも共にある。

だから、寂しがっちゃいけないんだ。


「コハク…。」

「ん…?」

「明日は…、笑顔で見送るって約束するから、だから…今夜は一緒に寝てもいい?」

普段のコハクは、男がいつまでも母親と一緒に眠るものじゃないと言って、同じベッドで眠ってくれない。

でも、今日だけは…。

「仕方ねーな。」

やれやれ…といったふうに、コハクは了承してくれる。

本当にどっちが子供かわからないね。

モモは嬉しそうに笑い、コハクと共にベッドへ潜り込んだ。

そんな母の様子を見て、苦笑う。


ねえ、母さん。

寂しがる必要なんか、ないんだよ。



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