第37章 冒険の海へ
賑やかな宴は夜遅くまで続き、酒に酔ったクルーたちが寝落ちするという終わりがくるまで、モモは本当に楽しく過ごすことができた。
絨毯の上でゴロ寝する仲間たち、ひとりひとりに毛布を掛け、モモは自室へと戻った。
その手には1枚の紙切れ。
新聞の記事だ。
少しシワの寄った記事を綺麗に伸ばす。
戸棚の引き出しの奥にしまいこんでいたせいで、ローに見つかり、あんなことになってしまったけど、もとはといえばモモが引き出しなんかにしまっていたのがいけない。
宝物なら宝物らしく、きちんと保管しておかなければ。
机の上の小さな小箱。
アンティーク調に作られた小箱は、モモの宝物入れだ。
中を開けると、コハクが生まれたときのへその緒の一部と、小瓶が2つ。
小瓶のひとつには紙切れの端っこが入っている。
これはモモの友達、メルディアのビブルカード。
島から出ることのないモモは、これを使って彼女を探すことはないけど、時折動くビブルカードを見ると、メルディアが元気なんだと感じられて嬉しくなる。
そしてもうひとつの小瓶には、……なにも入っていなかった。
この小瓶の中には、かつてモモと友達だった青年のビブルカードが入っていた。
けれど、今は影も形もない。
モモはその小瓶を苦い気持ちで握りしめる。
ビブルカードは、その持ち主が命を落とすと、それに反応して燃え尽きてしまう。
徐々に小さくなっていったビブルカード。
それが燃え尽きた瞬間を、モモは今でも忘れない。
もしあの時、自分の選択が違うものだったのなら、彼の未来もまた違っていたのだろうか。
後悔しても、し尽くせない。
今度こそ、自分の選択を間違えたくない。
だから…、これでいいんだ。
切り抜いた新聞の記事と一緒に、寂しいという気持ちも小箱にしまった。