第37章 冒険の海へ
その夜、モモの家ではハートの海賊団の旅立ちとコハクという仲間が増えることを祝して、賑やかな宴が開かれた。
明日からはコハクもヒスイもいないのだ。
精一杯のごちそうを振る舞ってあげたい。
「うんめー! 俺も料理はするけど、こんなに旨くは作れねぇや。」
「モグモグ…。シャチの料理はどっか雑なんだよ。」
そのシャチに料理を教えたのはモモだ。
美味いと言われて喜んだらいいのか、教え方が下手だったのを悔やめばいいのか悩むところである。
「モモ、このニホンシュは本当に美味いッスねー。納屋にある樽、本当に持ってっていいのか?」
よほどお酒が気に入ったのか、ペンギンがウキウキと尋ねる。
「ええ、わたしはお酒を飲まないから、良かったら全部持って行って?」
「ぃよっしゃー! ジャンバール、あとで運んで置いてくれよ。」
「ああ。他にもまだ荷物があるなら、置いておいてくれ。まとめて運んでおく。」
以前は力仕事はもっぱらベポの仕事であったが、今ではジャンバールの仕事になったらしい。
確かに彼はベポよりも身体が大きい。
「アイアイ! ジャンバール、ちゃんと おれの言うとおりに動くんだぞ。」
先輩風を吹かせるベポが可愛らしかった。
明日から、この家にはモモひとりだけ。
寂しくないといえば、嘘になる。
きっとローを思い出す分、コハクとヒスイのことも思い出すことだろう。
ひとりきりの食事、ひとりきりの世界。
だから、今日この夜の賑やかさを、ずっとずっと覚えておきたい。
それがわたしの、力になる…。