第37章 冒険の海へ
ローの長い舌がぬるぬると口内を蠢き、唾液が捏ねくりまわされて2人の唇を濡らす。
舌が絡み合って吸われると、甘い痺れに頭の中が鈍くなり、突き放さなきゃ…という思いが薄れていってしまう。
次第に脚に力が入らなくなり、どうにか立っていられるようにローへ重心を預けると、まるでキスをせがんでいるような体勢になる。
それに気分を良くしたローは、モモを抱き寄せ身体を密着させると、髪の毛を掻き回しながら、さらに深く口づける。
キスの合間にチクリと彼の顎髭が当たり、その痛みにすら愛しさが込み上げた。
もっと、して欲しい…。
思わずキスに応えようとしてしまったとき、中を掻き混ぜていた舌がスッと抜けた。
重なっていた唇が離れ、透明な糸が引く。
「ふ…ぇ…?」
急に自由になった唇に、驚きよりも物足りなさが勝った。
そんなモモの表情を見て、ローは愛しげに彼女の頬を撫でた。
「残念、時間切れだ。」
「え…?」
時間、切れ…?
ガチャ…!
「母さん、船に本 置いてきたよ!」
海賊船に本を運び終わったコハクが家に飛び込んできた。
「コハク……ッ」
すっかり忘れてた…!
跳ねるようにローから離れる。
「…? どうかした?」
2人の状況など露とも知らず、コハクが首を傾げる。
「なな…なんでもないわ…!」
なんてことだろう。
コハクの存在を忘れ、あろうことかローとのキスに夢中になってしまうなんて!
恥ずかしくて穴に入りたい気持ちになった。
「くく…。」
ローの忍び笑いが落ちてきた。
「……ッ」
誰のせいで…!
涙目で睨み上げるけど、情けない顔をしているせいでイマイチ決まらない。
(うう…、う~…!)
結局、コハクの気持ちとやらは聞けずじまいだった。