第37章 冒険の海へ
「コハクは…なんて言ってたの?」
あの子がなにを思って旅立ちを決めたのか、ローにはわかるというのか。
「知りたかったら……ホラ。」
なにをすればいいか、わかるだろう?
耳元で甘く囁かれた。
「……ッ、本気…?」
そんなことをして、ローにいったいなんの得があるのだろか。
冗談ならほどほどにして欲しい。
しかし、ローはそんなモモの願いを嘲笑うかのように言う。
「本気だ。それともなにか? お前は自分からキスのひとつもできねェくらい、お子様ってことか。」
…カチン。
「お子様って…。わたしはもう、23よ? 子供扱いしないで。」
ガキの身体だとか、お子様だとか、ローは昔から自分を子供のように扱うのだ。
それがいっつも頭にくる。
「それなら、キスくらい上手くできるだろ…?」
「…できるわ!」
売り言葉に買い言葉というのは、まさにこのこと。
あっさりとローの策略に引っかかってしまう。
「そうか。じゃあ、してもらおうか。」
身長差を埋めるように、身を屈めてくれる。
そうなってしまうと、できると言い張った手前、いよいよ逃げ場がなくなってしまった。
(うう、どうしてできるだなんて大見栄きっちゃったんだろう…。)
今さら無理でしたなんて、言える雰囲気じゃなくなってしまった。
「どうした、…ホラ。」
まるで、おもしろいオモチャを見つけたような眼差しが憎らしい。
「わ…、わかったわ。」
言ってしまった手前、もう引き返せない。
モモはローの頬を両手で包むと、彼の顔にそっと唇を寄せた。