第37章 冒険の海へ
コハクが出ていってしまうと、家の中にはモモとローの2人だけになる。
ちょうどいい。
モモはずっと気になっていたことを尋ねてみた。
「ねえ、ロー。聞きたかったのだけど、どうやってコハクを説得したの?」
あれだけ頑なに旅立つことを拒み続けたコハクが、どういうわけかローと戻ってきたときにはコロリと意見を変えていた。
むしろ、今では出航を楽しみにしていると言ってもいい。
モモでは無理だったことを簡単にやってのけたローに、少しだけ悔しい思いをしたのは内緒だ。
「…知りたいか?」
「うん。」
素直に頷くと、ローが意地悪そうに笑った。
あ…、嫌な予感。
「タダじゃ教えられねェなァ…。」
「……。」
またそういう意地悪を…。
胡乱な目つきで見つめてやるけど、ローは簡単に話してくれるつもりはないらしい。
「なにをしたらいいの?」
「ほぅ、察しがいいじゃねェか。」
まあ、慣れてますので。
「そうだな…、キスでもしてもらおうか。」
「な…ッ」
なにか見返りを求められるとは思ったけど、そういう要求!?
もっと、貴重な薬とか本とか、そういうものと交換だと思ったのに。
二の句がつげず、口を金魚のようにパクパクとさせてしまう。
「どうした、キスぐらいなんでもねェだろ?」
昨日、あんなにしたのだから…。
言外にそう告げられ、顔が燃えるように熱くなった。
「くく…、どうした? 顔が赤いぞ。」
リンゴのように真っ赤になったモモがよほどおもしろいのか、ローはクスクスと笑う。
なんだかバカにされてるように感じて、むうッと頬を膨らませる。
「じゃあもう、教えてくれなくていいわ!」
そうやってからかって、楽しんでるんだ。
拗ねてそっぽを向くモモに、ローは1歩距離を詰めて囁いた。
「いいのか…? なるほど、お前はコハクが、あんなふうに思ってたことをわかってたんだな。」
あんなふうに…!?
それっていったいどんなこと…?
聞き捨てならなくて、モモはローの言葉に食いついた。
簡単に釣れたモモに、ローが笑いをかみ殺したことも知らないで。