第37章 冒険の海へ
「母さん、母さん…!」
モモとヒスイがいつ戻るとも知れぬ別れをすませると、バタバタとコハクが戻ってくる。
その手には大量の本。
「これ、全部持ってっていいだろ?」
ドサドサと床に置かれた本は、すぐに山となった。
「え、全部…?」
さすがに多すぎやしないだろうか。
「全部は多すぎるんじゃないかしら…。船が本だらけになっちゃうわよ?」
ただでさえローの船には本が溢れているのに、コハクまで増やしてしまっては、いったいどうなってしまうことか。
「えー? …あ、ロー!」
ちょうど家へ入ってきたローを呼び止める。
「なぁ、コレ持ってっていいか?」
ローはコハクが指すズデンと積まれた本の山を見る。
「…構わねェよ、好きにしろ。」
むしろ自分も読んでみたい。
「えぇ…。」
彼らの会話に、情けない声をあげたのはモモの方。
ローとコハク、本の虫が2匹に増えた。
このままいったら本の重みで船が沈むのではないだろうか。
いや、潜水艦だから沈んでも大丈夫なのか…?
いやいや、そういう問題ではなくて。
まったく、島に残るはずの自分がどうしてそんなことを心配しなければならないのか。
もし自分が一緒に船に乗るのなら、彼らが本に埋まるような事態は防いでみせるのに…。
(もし、わたしも船に乗れたなら…。)
そんなこと、絶対あり得ないけど、想像するくらい…いいよね?
今日1日くらい、許して欲しい。
みんなと海へでる夢を見るのを。