第37章 冒険の海へ
ガチャン…。
コハクとローの帰りを静かに待っていたモモは、開いた玄関の音にパッと顔を上げた。
「…ただいま。」
「おかえりなさい…!」
少し恥ずかしそうに帰ってきたコハクを、モモはギュッと抱きしめた。
「ごめん、母さん。…ヒドイこと言って。」
「ううん、そんなことない。」
ふとコハクの後ろを見れば、ローが家に入ってくるところだった。
説得は上手くいったのだろうか…。
「えっと、コハク…。それでね…。」
「母さん。」
結果がわからないから、もう一度説得しようと試みた時、コハクがそれを遮った。
やっぱりもう少し、時間をかけて説明しなければいけなかっただろか。
しかし、コハクはモモの予想と正反対のことを口にする。
「オレ、ローたちと一緒に行くよ!」
さっきまでとは打って変わって意見を変えたコハクに、パチクリと瞬いた。
「え…。ほん…と…?」
「うん。明日、一緒に海へ出る。」
迷いのない言葉に、どんな説得をしたのだろうとローを見上げる。
しかしローはしたり顔で笑うだけで、なにも教えてはくれない。
やはり男の子は、父親の言葉の方がききやすいのだろうか。
子育てって、奥が深い…。
「ってことは、今日からコハクは俺たちの仲間ってことか!」
「賑やかになるッスねぇ~!」
「歓迎する。」
「おれも嬉しいよ! よし、ジャンバール。ちゃんと面倒みるんだぞ!」
仲間たちは口々に喜ぶ。
「ああ、よろしくな!」
しっかりと挨拶をするコハクに、まだ実感が湧かないけれど、大切な宝物が自由に羽ばたいていく音をモモは確かに聞いていた。