第37章 冒険の海へ
「それと、お前にひとつ、謝らなければいけねェことがある。」
「は…?」
またしても不可解なことを言い出したローに、目を見張る。
「謝らなければいけないことって、なんだよ?」
「約束を、破った。」
「約束…?」
そんなものしたっけか?
思い出せなくて首を傾げた。
『母さんに手を出すなよ!』
それは、モモと出会う前、コハクとした約束。
あの時は、なにをバカなことを言ってんだ。
出すわけねェだろ。
そんなふうに思ってた。
だけど、ローはコハクの危惧したとおり、美しい彼女に魅入られ、手を出すどころじゃすまないことをしてしまった。
あの時、コハクとした約束など頭の片隅にもなかったが、もし思い出せたとしても、きっと自分を止めることはできなかっただろう。
ともあれ、コハクとの約束を破ったことは事実だ。
「詫びの代わりに、お前の願いをひとつだけきいてやる。」
「はぁ…?」
詫びもなにも、コハクにはローがなんのことを言っているのかわからない。
「いや、別にローに叶えて欲しい願いなんかねーし。」
あえて言うなら、オレのことは放っておいてくれってことくらい。
「お前になくても、俺にはある。」
「……。」
もう、意味がわからない。
ローにはコハクが願って欲しいものがあるらしい。
だけど、それはもう、コハクの願いとは言わなくないか…?
「一応聞いてやるよ。…なに?」
立場が真逆のような気がするが、コハクはローに自分の願いとやらを尋ねた。
「そうだな、例えば…--。」
隈の目立つ凶悪顔が、ものすごい悪人面で笑った。