第37章 冒険の海へ
「……。」
「……。」
「……。」
「いや、なんか言えよ…ッ」
しばらく間続いた無言の格闘に、痺れを切らしたのはコハクの方だった。
コイツ、なんのために追ってきたんだ!
そもそも、どうしてローがコハクを船に乗せてもいいと思ったのかも疑問である。
「…用がねーんなら、オレに構うなよ。」
プイとそっぽを向いて、再び走り出そうとしたとき、今度はローの持つ大太刀の先っちょがシャツの中に入ってコハクの身体を宙へと浮き上がらせた。
「…って、おい! いったいなんなんだよ!」
雑な引き止め方に腹が立って、ジタバタと暴れた。
「で、なんだよ!」
逃げることを諦め、木の根にドカリと座ると、コハクは不機嫌さを露わにローへ問いかけた。
どうせ説得にでもきたのだろうが、モモならともかく、コイツに自分を説得できるかなんて考えるだけ無駄だ。
さぁ、どんな説得をする…?
できるもんならやってみろ!
そんなやさぐれた気持ちで、ローを挑み見る。
「…俺は、約束を守る男だ。」
「……は?」
急になにを言い出すのだろう。
「アイツと約束をした。お前を海へ連れ出して、医術を教えてやると。」
それは、モモの口からさっき聞いた。
「…だから、お前が泣こうが喚こうが、約束をした以上、お前を連れて行く。」
「……。」
…え、まさかソレ、説得のつもりか?
びっくりするぐらい一方的な物言いに、驚きを通り越して呆れた。
ついでに毒気も抜かれてしまう。
「…で? どのみち連れて行かれるんだから、素直についてこいって、そう言いたいのか。」
「察しがいいじゃねェか。」
「はあぁぁ…。」
ため息と共に、ガックリと肩を落とした。
オレ、こんなヤツを師として教えを請わなければいけないのか…。