第37章 冒険の海へ
(ちくしょう…ッ)
大人はみんな勝手だ。
コハクのいないところで勝手に未来を決めてしまって、自分の気持ちなんて考えもしないで…!
コハクは湧き上がるような気持ちを爆発させるように、ただひたすら森の中を走った。
母さんの、バカ…!
いいや、本当はわかってる。
バカなのはモモじゃない。
コハクだ。
自分はただ、逃げていただけ。
モモに夢を告げる勇気も、外へ飛び出す勇気もなかったから、母を理由に、島を理由に一歩踏み出さなかっただけ。
コハクに勇気がなかったから、代わりにモモが背中を押したのだ。
「どこまでも羽ばたいていいよ。」
そう言ってくれてるのに。
…勝手なのは、自分の方。
(ちくしょう…ッ!)
それでもコハクは、モモを置いて出て行くことなど考えられない。
どうしたらいいのかわからなくて、がむしゃらに走りつづける。
その時…。
“ROOM”
ブゥーンと周囲に薄い膜のサークルが張られた。
(え…?)
これは、ローの…。
“シャンブルズ”
あっと思ったときには遅かった。
コハクの視界は一瞬で切り替わり、気がついたときには地面を蹴っていたはずの脚は空を切り、バランスを崩した身体がドタンと尻餅をついた。
「い…って…ッ」
ひどく痛む尻をさすりながら見上げれば、想像したとおり、ローがコハクの前に立っていた。
…仏頂面で。
(なんでお前が追いかけてくるんだよ!)
思いもよらぬ追跡者に、コハクもおんなじ顔を返してやった。