第37章 冒険の海へ
「オレが…いなくなったら、母さんはどうするんだよ。」
モモのことは、ずっと自分が守っていたのだ。
もしコハクがいなくなったら、いったい誰がモモを守ってくれる?
「別にどうもしないわ。ここであなたが、立派なお医者さんになるのを願うだけ。」
彼らの活躍は、たまに新聞で知ることができるだろう。
それだけで十分なのだ。
「そんなの…ッ、はいそうですかって納得できるわけねーだろ!」
モモの言い分は一方的だ。
それなのに、彼らと共に行くことに胸をときめかせている自分がいる。
そんな正反対な気持ちに、コハクは堪らない気持ちになり、ガタンと椅子を倒すと そのまま弾けるように外へと飛び出した。
「コハク…!」
やはり話が唐突すぎたか…。
追いかけようと立ち上がる。
するとそれを、ローが制した。
「いい、俺が行く。」
「…えッ」
ローが?
意外な行動だった。
「アイツはこれから、俺の船に乗るんだ。俺の話も聞けねェくらいなら、どのみちやっていけねェよ。」
「それはそうかもしれないけど…。」
言うなりローは、コハクを追って出て行ってしまった。
「あ……。」
どうしよう。
ローを追って、自分もコハクと話すべきだろうか。
「大丈夫だよ、モモ。キャプテンが任せろって言うんだから、のんびり待ってようよ。」
「うん、でも…。」
コハクは自分に似て頑なだ。
ローに説得できるだろうか。
「平気平気! ウチの船長はカッケーからな、コハクもすぐについていきたくなるッス。」
「…そうね。」
ここで自分が慌ててもしょうがない。
ここはローを信じよう。
モモはローとコハクが帰ってくるのを、じっくりと待つことにした。