第37章 冒険の海へ
海へ出る…?
オレが…?
コハクがまず感じだのは、驚きではなく、また母さんってば突拍子もなことを言って…という呆れ。
ローたちと一緒にってことは、つまり彼らの仲間に、海賊になるってことだ。
子供の自分をローが連れて行くわけないのに、あり得ない空想話に笑った。
「…なに言ってんだよ、母さん。」
そんなことを言ったら、他のみんなにも笑われてしまう。
チラリと周りに目を向ければ、みんな戸惑ったようにローを見ていた。
そして当のローはといえば、笑いもせず、呆れもせず、ただ黙って食後のお茶を啜っている。
その様子が、モモの話に現実味を帯びさせる。
「ローにはちゃんと、了承を得てるわ。」
「え……。」
コハクの考えを察したかのように言えば、黙ったままのローが浅く頷き、この話が冗談じゃないことを教えてくれた。
「ちょ…。」
ちょっと待ってくれ。
いったいこれは、なんの冗談だ。
コハクは動揺する頭で必死に考えた。
オレが海賊になるだって?
どうしてそんなバカげた話になったんだ。
そんなの…。
「無理に、決まってんだろ。」
キッパリとモモに言い放った。
「あら、どうして?」
「どうしてって…。別にオレは、今のままでいいんだ! 余計な気を遣わないでくれよ。」
この島で、モモとヒスイと3人で暮らしていくことが幸せなのだ。
「……嘘。」
今度はモモがキッパリと断言した。
「バカにしないでちょうだい。わたしはこれでも、あなたのお母さんなのよ。コハクが本当はどうしたいのかくらい、ちゃんとわかってる。」
コハクがずっと、外の世界に憧れていたのを知らないほど、モモの目は節穴じゃない。
しかしモモのために、この島にいることを幸せだって思おうとしてくれていることも。
「…そんなことねーよ。確かに興味はあるけど、それだけさ。オレはここで、母さんと一緒にいることが幸せなんだ!」
どうしたって認めようとしないコハクに、モモは最後の切り札を投げかける。
「コハク、あなたの夢はなに…?」