第36章 心に灯る火
リビングへ出ると、すぐに違和感に気がついた。
部屋が片づけられている。
しわくちゃになった絨毯は綺麗に伸ばされているし、飲みかけだったお茶もカップが洗われてキッチンに戻されている。
少なくとも、傷ついたモモが勢い余って外へ出て行った…という感じではなさそうだ。
むしろ家の中にいる可能性の方が高い。
1階にいないところを見ると、自室のある2階だろう。
すぐにそちらへ足を向け、階段を上がった。
コンコン。
モモの部屋をノックしてみる。
…反応はない。
マナー違反だとはわかっているけど、どうしても彼女の存在を確かめたかったローは、しばらく躊躇した結果、ゆっくりとトアノブを回した。
ガチャリ。
もともと鍵など付いていないドアは簡単に開き、ローを招き入れる。
しかし部屋は暗く、人の気配はなかった。
モモの痕跡を探して部屋に足を踏み入れると、テーブルに彼女がさっきまで着ていたシャツが置いてあった。
ローが引きちぎったシャツ。
罪悪感という苦い思いを味わいながら近づくと、一応繕おうとしたのか裁縫セットが目に入る。
しかし、ほとんど布切れと化したシャツに修復は諦めたようだ。
悪いことをした。
こんな無人島では、衣服ひとつ手に入れるのも苦労するだろう。
替えをあげたくても、ローは女性の衣類など持ち合わせていない。
もしここにブティックショップがあったのなら、店丸ごと買い上げてあげるのに。
「……ハァ。」
モモに対して、なんの償いもしてあげられないことにため息が出る。
モモはハートの海賊団に、そしてローに、たくさんのものを与えてくれたのに。
モヤモヤとした気持ちが広がるが、まずは彼女を探すことが先決だ。
部屋を出ようとシャツから目を離したとき、テーブルに置かれた あるものに目が留まった。