第6章 戦いの中で
「本を借りたい…?」
うんうん、と頷いた。
次の日、モモがローに頼んだことは医学書を借りること。
昨日の一件で己の無知さを知らしめられたから。
(もっと勉強しなくちゃ。)
前々からこの部屋にある本の山には興味を惹かれていたし。
「まあ、いいが…。」
(ほんと!?)
ローはあっさり了承してくれた。
しかし…。
「ただし、条件がある。」
(え…。)
ニヤリと笑うローに、嫌な予感しかしない。
「一冊につきキス一回だ。当然、お前からな。」
「………。」
断られる、もしくは何かしらの条件は付いてくるとは思ってたが。
これは想定外だ。
(ムリムリムリ…!)
ぶんぶん首を振って拒否する。
「じゃあ、この話は無しだ。」
(えぇ…!?)
話は終わりとばかりに、ローはデスクへ向き直ってしまう。
ローとは何度もキスをした。
唇を合わせるだけのキス、口内を弄られるような激しいキス。
でもどのキスも、いつもローが求めてくるもの。
自分からなんて一度もしたことがない。
そんな恥ずかしいことできない。
でも勉強はしたい。
ぐるぐると激しく葛藤する。
やがてモモは一冊の本を手に、ローの下へ近づいた。
「なんだ、する気になったのか?」
(触れる、だけなら…。)
ほんの少しだけでいいのだ。
ゴクリと息をのみ、頷いた。
「そんなにお前がキスしてェって言うなら、させてやってもいいぜ。」
ちょっとだけ、殺意が湧いた。
ほら、とモモの手を取り、椅子に座った自分の前に立たせる。
「どうぞ?」
(目、目を瞑ってよ!)
「わかったよ、ホラ。」
ローの肩に手を置き、呼吸を整えてから顔を近づけた。
が、そこから動けなくなった。
ぷるぷると震え、恥ずかしさに涙目になった目で待ち構えるローを睨みつけた。
(触れるだけ、触れるだけなんだから…ッ)
自分を叱咤し、勇気を出して顔を近づける。
鼻と鼻が触れ合うかと思ったとき、ローの目がパチリと開いた。
「…遅せェよ。」
「---!!」
至近距離で交わった視線に心臓が飛び出るほど驚き、大きく仰け反る。
「おっと…!」
腰に回したローの腕が、モモを捕まえた。