第6章 戦いの中で
「なあ、俺たちがお前と出会って、どれくらい経った?」
(2週間と少し…。)
まだ、たったそれだけ。
たったそれだけで自分の人生は大きく変わってしまった。
本格的に海軍から追われる身となった。
ひとりで細々と暮らす生活に別れを告げた。
自分の目標ができた。
大切な仲間を手に入れた。
たった2週間ちょっとが、なんて密度の濃い日々だったことか。
(今までの12年間、わたしは何をして生きてたんだろう。)
そんなふうに思えてしまうほど、激動の日々だった。
「ひと月も経ってねェのに、お前はすっかり俺たちの仲間だな。」
ローもモモと同じように思ってくれている。
「お前はどう思ってる。」
(わたしも同じ気持ち。もう元の生活に戻れそうもないわ。)
ローの問いかけに大きく頷いた。
その返答に、彼の手が優しくモモの手を握る。
「なら、もっと俺たちを信用しろ。」
言われた言葉に、一瞬息が止まった。
「お前がなにを隠してんのかは知らねェ。けど、俺たちがそんなに信用できねェか?」
なんて言ったら、どう反応したらいいかわからない。
「なあ、モモ。俺が信用できねェか。」
(しん、よう…。)
違う、違うのだ。
信用してないんじゃない、ただ恐ろしいだけ。
みんなが、あなたが、大きな存在になりすぎて、失ったときにどうしたらいいかわからない。
あなたのこの手が、離れていったらどうしたらいい?
なんて伝えたらいいかわからなくて、モモは笑った。
グニ
モモの頬をローが抓る。
「……?」
「その顔は嫌いだ。」
貼り付けたような笑顔。
「笑いたくなきゃ笑うな。そうやって笑顔で誤魔化すのは止めろ。」
「………。」
「お前が言いたくねェことを、無理には聞かねェよ。…でも、これだけは覚えとけ。」
抓った手を離し、そのまま頬を包み込む。
「何があっても守ってやる。海軍だろうが、海賊だろうが、お前を渡すつもりはねェ。」
目の奥が熱くなり、涙が溢れる。
「だから、俺を信用しろ。」
「--ッ」
瞬きと共に落ちた涙。
それと同時に彼に抱きついた。
(弱虫で、ごめんなさい…。)
涙でぐしゃぐしゃの顔は不細工だったろう。
それでも、ローは嘘の笑顔よりずっと良いと言ってくれた。