第36章 心に灯る火
甘い甘い痺れに、身体だけでなく頭の中まで侵されていく。
彼の熱、彼の匂い。
その全てがモモを溶かし、良い子面した自分を崩していく。
他の女と一緒にしないで。
ううん、もっと触れて、抱いて。
早く冒険に出て。
嘘よ傍にいて、行かないで。
いろんな想いがぐちゃぐちゃに混ざり合い、モモを狂わせる。
ごめんなさい、あとでいくらでも後悔するから。
だから、今だけは……許して。
か細い両腕を伸ばし、決して自ら触れることを許さなかった、ローの身体へと抱きついた。
固い筋肉、信念の象徴のタトゥー。
ずっとずっと、触れたかった。
本当は寄り添いたいのに、身体に力が入らなくて抱きつけずにいると、力強い腕がモモを攫った。
グンと身体が浮き上がり、繋がったままローの膝の上に座るようなかたちとなる。
「ん…ぁ…ッ」
体勢が変わる僅かな動きでさえ、ビリビリと痺れてしまうくらいモモの身体は敏感になっている。
そこへ追い討ちをかけるように、耳元で低い囁き声。
「お前…、こんなときに煽りやがって…。どうなるかわかってんのか?」
「ふ…え…?」
なんのことを言っているのだろう。
モモは少しだって煽っていない。
まさか甘えるように伸ばした腕が、ローの心を動かしたことを露ほども知らないモモは本気で首を傾げた。
「男をナメるとどうなるか…、教えてやるよ。」
ローはペロリと舌なめずりをすると、モモの腰をしっかりと抱え直し、ズルリと楔を引きずり出して一気に子宮の入口まで貫いた。
「ひぁ…ァ…ッ」
重たい突き上げに、肺から空気が出そうになる。
「気絶したって離してやらねェ…。覚悟しろよ。」
「あ…ッ、ひぅ…あァッ」
徐々に押し寄せてくる絶頂の波に、本当に気を失う予感がした。
軋み続けるベッドの上で、モモは恋い焦がれていたローの熱を手に入れることができた。
でも、いくら快楽に頭が溶けきっても、本当の気持ちだけは言えない。
『ロー、好きよ。愛してる。』
彼の腕に抱かれ、宣言通り意識を手離すことになっても、それだけは口に出すことはなかった。