第36章 心に灯る火
本能的にモモはもう逃げないと思ったから、さっきみたいに拘束するような体勢は止め、緩く抱きしめて彼女の中を楽しむような律動を加えた。
「ふ…ッ、あ…ぁ…んッ」
優しく扱えば、それだけモモも甘い声を聞かせてくれる。
こうしていたら、自分たちはまるで恋人同士のように見えるだろう。
普段のローだったら、そんなことを考えたら砂を吐くような気分になるのに、どうしてだか今はとても素晴らしいことのように思える。
恋人になったなら、彼女は自分を見てくれるだろうか。
今も海の上にいるというコハクの父親なんかより、ずっと自分だけを…。
「ふ…ッ、んぅ…は…ッ」
欲望のままに突きまくりたい気持ちを制し、彼女の熱を感じていると、徐々にモモが腰を揺らし始めた。
「…足りねェのか?」
「ふ…ぁ…?」
どうやら無意識のことらしい。
「腰が、揺れてる。」
「--ッ、ち、ちが…ッ」
顔を真っ赤に染め、ぶるぶると首を振る。
可愛い、苛めてやりたい。
「違わねェよ。嫌がった素振りをして、本当は気持ちよくなりてェんだろ。」
「そんなこと…--んァッ!」
ズンと奥に楔を打ち込めば、蜜壁がキュウッと締まり、モモが感じていることを教えてしまう。
「ホラ、気持ちいいってよ。」
「ひぁ…ァ、そんな……んッ」
そんなんじゃない。
そう否定したいのに、興奮したローは固い切っ先で壁をグリグリ刺激して、モモに言葉を紡がせてくれない。
とめどなく襲う快楽の波に、次第になにも考えられなくなってしまう。
ただ、ローの熱だけを感じていられる。
ああ、夢のように…幸せ。
例え、覚めてしまう夢だとしても。