第36章 心に灯る火
お腹の上に熱いものをかけられた瞬間、モモは全身が快感の波に飲み込まれ、スパークするのを感じていた。
短時間で2度目の絶頂。
雷に打たれたような刺激に、つい意識を手放しそうになるが、すんでのところで堪えた。
だけど、ピクピクと痙攣をし続ける身体が言うことをきかない。
モモは未だなくならない快感の余韻と、身体を蝕む倦怠感に侵されながら、ローがお腹にかかった体液をティッシュで拭き取るのを静かに見つめていた。
「……う。」
ぐったりとして動かない身体を叱咤し、だらしなく乱れた肢体を彼の前から隠そうともがく。
するとそれまで動かなかった身体が急に軽くなり、ふわりとした浮遊感を味わう。
「……?」
のろのろと視線を上げれば、モモの身体は軽くなったわけでもなんでもなく、ローの腕によって抱き上げられただけ。
何事かと思って目を見張れば、ローはモモを連れて病室のベッドへと向かっていた。
「…離し…て。」
絨毯で擦れた背中は痛かったし、柔らかなベッドに運んでもられるのは嬉しいけど、ほとんど裸の自分は、抱き上げられると自然と身を寄せるような体勢になってしまう。
今さらながら、それが恥ずかしかった。
しかし、ローはそんな戯言のような制止は聞かず、さっさとモモを病室に運び、ベポが眠れるほどの大きなベッドへモモを転がした。
ボスンと沈むベッドの柔らかさと、洗い立てのシーツの香りが心地良い。
このまま毛布にくるまり、眠ってしまいたい。
そんなふうに思っていたら、ギシリ…とベッドが軋む音がした。
なんだろう…。
まず思ったのは、そんなこと。
次に思ったのは、ローの身体はやっぱり逞しいという賛辞。
目に入ったローの姿は、久々に見る素肌を晒したものだったから。
(素敵…。)
そんなことを考えていたら、ベッドに乗り上げてきたローが、モモにキスを落とした。
素肌の胸同士が重なり、互いの鼓動を伝え合う。
でも、彼はどうして服を脱いだのだろう。
唇が離れる瞬間、そんな疑問が浮かんだ。
「悪いな、まだ…足りねェ…。」
呼吸が触れ合うほどの距離で、ローが呟いた。
(え……?)
今、なんて言った…?