第36章 心に灯る火
ぶるぶると身体中が痙攣し、モモの意識は真っ白になりかける。
だけど、すぐに降ってきた痛いくらいのキスに、意識を手離すことすら許されない。
「ふ…ぅ…。」
唇を食まれ、舌を吸われ、強く求められる口づけに、一瞬自分自身を求められているような気がして、冷えた心が少しだけ温もりを取り戻す。
このまま、最後の思い出として彼に抱かれよう…。
そんなふうに思えたなら、どれだけ幸せだったことか。
頑なな自分は、そんな幸せを認めない。
目先の幸せより、彼の中で“一夜の女”になる事実をなにより嫌だと思った。
ローの温もりが、夢に出るほど欲しかった。
その胸に擦り寄り、キスに溺れ、甘い時間を過ごしたかった。
でも、それをしてしまうと、自分は彼の中で多くの女の中のひとりになってしまう気がして、それが絶対許せない。
達したばかりで未だ痙攣している秘裂に、熱くたぎるものが押し当てられた。
ソレがなにかなんて、考えなくてもわかる。
「い…、嫌……。」
いくら願っても、夢のような現実は訪れてくれるわけもなく、絶望に打ち震え、モモの瞳から涙が流れた。
「そんなに…、俺が嫌か…。」
違う。
そうじゃないの…。
涙で滲む視界では、ローが今、どんな表情をしているかはわからない。
でも、同情で止めてもらえるなら、いくらだって涙を流そう。
しかし、結局モモはわかっていなかったのだ。
現実はそんなに甘くないってことを…。
「悪いな…、もう…止められねェ。」
ギチリ、と音を立て、モモの蜜壺に彼の指とは比べものにならないほど質量の増した楔が穿たれた。
モモの心が、急激に冷えていった。