第36章 心に灯る火
自分がいつから女という生き物に魅力を感じなくなったのか、ローは覚えていない。
気がついたときには、街の酒場で客引きをする商売女も、ローに見惚れ自ら身体を差し出す尻軽女も、嫌悪の対象にしかならなかった。
身体を見せつけられても なにも感じないし、キスや性交など考えるだけで寒気がする。
それなのに、いったい自分はどうしてしまったのだろう。
ローがモモに抱く感情は、そのどれもが当てはまらない。
白く形の良い胸が、荒い息遣いに呼応して ふるりと揺れた。
胸元に散るキスの痕が、まるで彼女が自分のもののように感じられて、ローの心に満足感を与える。
でもそれも、一瞬のこと。
「わたしに、触ら…ないでッ」
強い拒絶の言葉に、心の中にドロドロとした黒いものが溢れていく。
その気持ちの正体を、ローは知らない。
「大人しくしてりゃァ、ヒドくはしねェよ。すぐに済ませてやる。」
どうしたって自分を受け入れない彼女に苛つき、酷い言葉ばかり吐き出してしまう。
傷ついた顔をしたモモに、ズキリと心が痛んだが、それくらいで止まる欲情なら、最初からこんなことはしない。
もし、彼女が笑顔で自分を受け入れてくれたなら、ローの心はどれほど凪ぐことだろうか。
そんな夢みたいなことを考えながら、ローはスカートの中に手を潜り込ませ、触れることの許されない箇所を弄った。
「や…ッ」
ビクリと大きくモモの身体が跳ねた。
それと同時に、ローの指先にトロリとした蜜が絡まる。
「……濡れてる。」
いくらモモ自身がローを拒んでも、彼女の身体だけは、自分を受け入れてくれてる。
その事実が、この状況に相応しくない喜びをローに与えた。