第36章 心に灯る火
ああ、まるでこれでは、あの時のようではないか。
モモが純潔を失った日。
ローと初めて、身体を重ねた日…。
あの時もこうして、ローの心がわからないまま、ただ一方的に奪われてしまった。
けれど、あの時と今では大きく違うことがある。
それは、同時の彼はモモを愛し、大切に想っていたということ。
愛故に、暴力的な行いをしてしまったのだ。
でも、今は…?
彼の心に、自分を想う気持ちはある…?
ローの心にモモは存在しているのだろうか。
他の誰かではなく、たったひとりの“わたし”として。
バカじゃ…、ないの…?
甘ったるい空想に未だ囚われている自分に呆れ果てた。
強く、誇り高いロー。
彼がたった数日で、冴えない女に恋をするとでも?
そんな結末なら、どんなに素敵な恋愛劇だったとしても観客はガッカリだ。
世界はそんなに甘くない。
わたしは“あの時”の彼のもの。
だから、今のあなたに触れられたくない。
「嫌…ッ、わたしに、触ら…ないで…ッ!」
渾身の力でローを突き飛ばした。
しかし、モモの腕力など、ローにとっては子供の力に等しい。
ローは抵抗するモモをチラリとだけ一瞥すると、邪魔な両腕を片手で掴み、頭上でひとまとめにしてしまう。
「ん…、痛…ッ」
「大人しくしてりゃァ、ヒドくはしねェよ。すぐに済ませてやる。」
愛の欠片すらない言葉に、絶望で震えた。
わたしを“誰か”にしないで…ッ。
スルリと内股を撫で、ローの指がモモの茂みを弄る。
「ひ…ッ」
長年誰にも触れられることのなかったその場所は、僅かな刺激でも敏感に感じとった。
溢れた蜜が、クチュリ…とローの指に絡まる。
「……濡れてる。」
隠しようもない事実を述べるローに、羞恥と動揺でモモの視界は目眩を起こしたように揺らいだ。