第36章 心に灯る火
予感がした。
もう逃げられないんだって。
「な…、なにしてるの? どいて…よ。」
口から出た問いは、笑ってしまえるくらい掠れていた。
「……。」
しかし、ローはなにも答えてくれない。
「約束…したよね。口でしたら、なにもしないって。」
モモは貞操を守るため、自ら口淫を提案したのだ。
そして、約束はもう果たされたはず。
だから…、どいてよ。
どうしてそこにいるの?
そう言いたかったけど、これ以上怖くて問いただせなかった。
だって、ローの瞳がすでに答えを語っているような気がしたから。
「無理だった。」
「……え?」
ビ…ッ
モモが聞き返すのと、ローがモモのシャツを引き裂いたのは、ほぼ同時だった。
「……やッ!」
裂かれたシャツは、その瞬間ただの布切れと化しモモの上半身はローの前に晒け出された。
先ほどホックを外されてしまったせいで、下着は胸を隠す機能を果たしてくれない。
白い胸の上で、ローがつけたキスの痕が淫らに散っていた。
ゴクリとローの喉が鳴る。
かろうじて肩に引っかかっていた下着を乱暴に奪われてしまう。
「やだ…ッ、止めて…!」
下着を取り返したらいいのか、胸を隠したらいいのかわからずオロオロしているうちに、子供を産んだ女とはとても思えない張りのある胸がローの目にとまってしまった。
まるで芸術品でも見るように、ローの口から感嘆のため息が漏れた。
大きな手のひらが、柔らかな膨らみをキツく揉む。
「あ…、痛い…やだ! 触らないで、約束したでしょう!?」
わたしを“誰か”にしないって、約束したじゃない。
しかし、モモの叫びはローの無慈悲な言葉によって砕かれた。
「約束をした覚えはねェ。」
ローはあの時、一度だって頷いていないんだから。
「そんな…!」
嘘よ、そんな言い訳なんてあるものか!
「すぐに終わらせてやる。…そんなに嫌なら、目でも瞑ってろ。」
そう言うとローは、強引にスカートの中へ手を忍び込ませ、ショーツを無理やり引きずりおろした。