• テキストサイズ

セイレーンの歌【ONE PIECE】

第36章 心に灯る火




可哀想なことをした。

口淫だなんて一方的なことをさせておきながら、汚いものを口の中に放ってしまった。

追い討ちをかけるような行いに、さすがのローも心苦しさを隠しきれない。

たった一度の射精だけではローを苦しめる熱は引かなかったけれど、それでもモモに対する申し訳なさから、ほんの少しだけ冷静を取り戻すことができた。

『吐き出せ』

そう彼女を促そうとした瞬間だった。

モモが口の中のモノを、ゴクリと飲み込んだのは…。


オイ、なにしてくれてんだよ…。

今、なにを飲み込んだのかわかっているのか。

喉を下っていったのは、たった今、自分が吐き出したモノだ。

ローでさえ汚いと思うソレは、モモからしてみればヘドロも同然だろう。

そんなローの身体の一部が、喉をつたって彼女の体内に入っていった。

その事実が、ローの心を再び熱くさせる。


ボ…ッ。

灯った火が、消えない。



「ゲホ…、ゲホゲホ…。」

粘つく液体は喉に張り付き、えぐみのある嫌な後味を残した。

(マズい…。)

飲み込むようなものではないのだから、当たり前だけど。

モモは舌に残る粘つきを水で流し込もうと思い、のろのろと立ち上がろうとする。

ガシ…。

しかしその前に、モモの肩をいつの間にか椅子から立ち上がっていたローが掴んだ。


「……?」

どうしたんだろう、と首を傾げた。

約束は果たした。

下手くそなりにも、自分はローの欲望を吐かせることに成功したのだ。

だから、もう自分には用はないはず。

「……? 離して…--」

ローの腕を外そうと、手をかけた刹那…。

グン…ッ

モモの視界は反転した。

ドサ……。

気がついたときには、モモの目には自分に覆い被さるローの姿と、家の天井だけが見えていた。

一瞬、少し前に時間が遡ったのかと思った。

ローがモモを抱こうとしていた、あの時間に。


(……え?)



/ 1817ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp